スープ

  • エンティティの属性値操作
  • エンティティの値を元にしたルールの作成と動的な適用

この2点が任意にできれば、業務システムの8割は完成したも同然だと思っている(嘘です。作れません)。
ルールエンジンをいじり倒したことがないので確信は持てないが、たぶん大丈夫なはず。きちんとした仕様書に必要なものはINとOUTとルールを表現する平叙文の集合であると考えていて、これが正しいとすればルールエンジンは桃源郷への案内人になってくれる。

いくつかのルールの適用の積み重ねが自己組織化を導き、予測できないがほぼ望ましい結果を導く。
この原則がもたらす革命的な素晴らしさを説明してくれるのが『創発』(ISBN:4797321075)だ。『複雑系』のコンセプトの発展後を描いているのだが、変革の同時代に生きる喜びを感じられて気持ちいい。シムシティスラッシュドットが登場するなど、かなりアレゲな本。
山形浩生の訳文もあいかわらずシャープだが、訳者あとがきがないのが残念だ。訳注やあとがきにこそ彼の良心(つまり意地の悪さ)がでるのに。

並行して『徳の起源』(ISBN:4881358774)を読んでいる。こちらは利己的な遺伝子の考えをもとに、なぜ利己的な個の集団から利他的な「徳」が生まれるかを、観念が入り込まない形で論じている。これも利己的なルールを集積することで「徳」という傾向が生まれるという自己組織化の話だ。

まったく別の意図で読んだ本が似たような概念を論じているという同時性は、素敵な感覚をもたらしてくれる。
(実は、『徳の起源』というサイエンスの本は経営書として紹介されていた)


創発』の中に出てくる、混沌としているようなことを指す「スープ」という言葉が気に入っている。海外モノの文章には割とよく出てくる表現だけど、出所は何だろう。イソップみたいな寓話かな。